アニメ畑に活かしたい。フルサイズミラーレス一眼”シネマ”カメラ「SIGMA fp」

  

こんな自分に合うカメラはありますか?

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すごいカメラを買ってしまいました。大袈裟かもしれませんが、これは自分にとっても恐らくカメラ界にとっても転機に成り得るプロダクトだと思えます。

 

話は遡り、

特別誇るでもないカメラ遍歴を思い返せば2000年代頭の中学生の頃までは「写ルンです」をまだまだ使っており、それ以降からすっかりデジタル化。ガラケーよろしく今はなきVodafoneで「写メ」ったり、SONYNIKONやらのコンデジを使い、大学生では後に続くスマホ時代を築くiPhone3Gを使い始め、2010年代頭の社会人になった頃にはミラーレス一眼の流行りに乗ってせめてもAPS-CサイズのNEX-7を使うように。

自分の世代は多かれ少なかれそんな流れでしょう。

 

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自分が所属するアニメの仕事の本分は当然の事ながら絵を描くことなので、あくまで自分の感覚ですが写真それ自体は作品というより絵を描くための参考であったり下地であったり、という二次的なイメージがあります。なのでAPS-C一眼クオリティーの時点でもまったく十分だったし、iPhone7辺りからはもうスマホの「楽にそこそこキレイ」で十分かもと密かに感じていました。仕事に打ち込めば打ち込むほど美しい画を求める衝動は全部アニメーションに持っていかれるんです。

けれど、よく耳にしていた”フルサイズ”の言葉。写真の世界で最高峰の証として存在するらしいそれは自分にとっては贅沢なのか、機種変更してiPhone11Proにしておけば十分なのか、なんとなくSONYのα7も調べてみたり…。その世界で生きておられる方々にはお恥ずかしい自分のような中途半端な要求度から変な迷い方をして、それでも気になっていた世界。

 

そこへ、見たこともない奴が現れたんです。「SIGMA fp」でした。青天の霹靂でした。何はともあれ撮ってみました。

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自分にとってはそもそもフルサイズであることと、SIGMAの美意識が生み出す未体験の画には驚きました。デフォルトにある「ティール&オレンジ」という映画ライクな色調で撮影できるのですが、覚えたての言葉で「撮って出し」つまりPCやスマホなどで加工しないそのままの画ということですが、それで画になるカメラというのには驚きました。これもデジタル世代で楽してきた身としてはフィルムでもないデジカメが素でこういう力を持っているのには感動を覚えてしまうんです。フルサイズとしてのボケ感や夜間での明るさにも当然衝撃です。ほんとカメラに精通された方がこれを読まれるなら申し訳ないほど導入の感動なんですが…。

使っていた前機種と愚直に比較しても黒の締まりや質感の追い込み、マットなハイライトなどはメーカー違えばこうも理念が違うのかと分かるし、プロダクトとしてもフルサイズでありながらのサイズ・軽さに、どこへでも連れ出したくなる洗練されたデザインと質感。フォントやUIに至るまでよく練られていて、このfpのみならずSIGMAにはすっかりハマってしまいました。(そういえば、ロゴ重視の自分としてもSIGMAには惹かれるんです…)

 

ただしここまでに挙げた長所だけなら、自分のような仕事柄と要求に見合うカメラはこれしかないとはまだ断言できません。このカメラである理由は、次にありました。

 

 

 シネスコが撮れる

自分にとってはもしかしたらこれが一番大きかったかもしれません。

一般的なレンズ交換式スチルカメラは動画も撮れるけどあくまで写真用。大概が3:2やいって16:9のアスペクト比の画しか撮れません。そこへSIGMA fpはスチルカメラでもあり同時にシネマカメラでもあるという特性から、映画では一般的な「21:9(1:2.39)」のアスペクト比が選べるんです。シネマスコープサイズ、いわゆるシネスコです。

映像畑の人間は皆多かれ少なかれ高品質な映画の画に憧れがあります。アスペクト比は映画の質を担う表層的なほんの一要素ではありますが、初見の印象を大きく左右し演出面にも多大な影響をもたらします。自分の場合は人物にあまり寄りたくなく、代わりに風景を広く見せたい。そうすると自然とこのくらいワイドが好きとなってくるんです。

こんな感じに、fpでは普通にシネマスコープの写真が撮れます。

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自分は過去自主制作・商業制作の両者でシネスコで撮って(作って)いました。

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「rain town」(2010年)アスペクト比は1:2.35

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ペンギン・ハイウェイ」(2018年)アスペクト比は1:2.2

風景だけでなく人物も同一画面にたくさん収められます。液晶画面や、スマホの画面では黒帯ばかりで随分損をしがちなシネスコですが、いざ映画館でとなると逆なんですよね。シネスコが最も大きく広いことが多い(はず?)。ハリウッド大作映画はほとんどその選択をとっているようです。自分もまた作らせてもらえるならやっぱりシネスコがいいなと思います。

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シネスコの良さのひとつに映画が基本的に人物同士の対話によって構成されていることが大きいと考えられます。よく見かけるような話している人物の矛先に聞いている人物の肩なめが入る画です。シネスコの横幅を使って同じ目線の人物を適宜配置し相対的に空間演出できるのだと思われます。

 

とにかく、SIGMA fpはこれが撮れる。他のカメラにはない機能なのでそれだけでも一気に惹きつけられてしまいました。上記のように自分はアニメで絵描きなので写真をそのままは使いませんが、よりリアルな空間を感じる画面を絵であっても作りたいとなれば「写真レイアウト」という形で写真を絵の下地に使うことがあります。これはよく商業の現場で行われていることで、本来は手描きで描くべきところを技量と時間が足りないから写真載せとけとネガティブな使われ方もあれば、より良い画を目指すために空間は写真の説得力をいただきつつ最終的には絵のゆらぎでもっていいとこ取りの画を目指そうとするポジティブな使い方があります。出来るだけ後者でありたい…。最近の聖地巡礼と呼ばれる現象を引き起こすのは大概がこの手法を使っていることに関わっていますが作り手にとっては順序が逆で、ただただ画の奥行きに忠実であるがために写真の力も借りようとするだけです。

下地だけでなく写真や実写映像をそのまま使う稀有なアニメ作品もありますが、それら作品のようによほどの演出意図がない限りはご法度の世界ではあります。 

 

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話を戻してfpはスチルとシネマ、つまりは静止画と動画の比重が完全に半分となっており、上面スイッチひとつでミラーレス一眼カメラとシネマカメラに完全に切り替わります。つまりメニュー画面やら実際の機能やらが一気に切り替わるんです。ありそうでなかった合理的設計。

さらには完全に映画業界向けの機能ですが、一般には知られない数多くの映画フォーマットのアスペクト比が存在し、それをこのfpで全て再現できるというから驚きです。ただし現状は見え方を確認できるのみで実際にそれで撮影できるのは以降のアップデートによるとのこと。今後に期待大です。(自分としては1:2.2という古い規格のアスペクト比がお気に入りで「サウンド・オブ・ミュージック」の時代の映画なんかに多いんですが、それがあれば…)

 

アニメレイアウトの想定さえできればなので、まずはスチルでシネスコ撮影してきました。

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f:id:Tete:20191228174229j:plainフルサイズの画、SIGMAの画、そこにもうひとつアスペクト比の違いが加わるだけでまた一段と見え方が変わりました。映画みたく対話する人物がいればおのずとレイアウトは決まってくるんですが、いつものスナップ写真の感覚で挑むとどう撮ったものかと悩みますね。自分でもまだ慣れなさと同時に一定の手癖が感じられて、もっと違うものを撮れないものかと頑張らねばです…。

 

アニメ畑で活かすこと。自分にとってはそれがシネスコの画作りを日常の中で訓練できることが大きいです。作品のロケ地が決まればその景色を写真素材として撮影しレイアウト・背景美術の下地にもできるんです。これも大きい。

もっと広く見て映像畑に活かそうとするなら、フルサイズで4Kが手軽に撮れますし何より「cinemaDNG」というデータフォーマットで撮れることがfpを「シネマカメラ」足らしめる際立った特徴だと謳っています。これまた不勉強な自分がよく分かっていなかった写真畑でよく目にする「RAW」データ。JPEGに比べて階調が豊富で、非破壊で編集できるなど写真を作り込むには重要なフォーマットとのことですが、それを知った上でさらに映像データにもDNGという「RAW」が存在するとは驚きでした。そしてこのカメラはあくまでスチルカメラ界にいながらそれが扱える異端児ぶり。それによって映画らしいあの上品な質感の映像が作れるんだとか…!(もちろんfpのその他のスペックもあってこそのようですが今は割愛)

  

正直今の自分にとってはまだ必要のないスペックかもしれませんが、スチル・シネマ両ジャンルにおけるプロの基準をこの価格とポケッタブルなサイズに仕込んでいることは、後は使い手の想像力に委ねられるのみですね。動画撮影の未知の分野、今後使ってみないわけにはいきません。

 

 

fpに込められた思想は今多くの人に届くはず 

このSIGMA fpに込められた画期的な思想と可能性。つい最近あったお披露目イベントの社長のプレゼンが分かり良いのでは。すごく雰囲気も良いんですよね。コンセプトムービーも良いんです。

 

fpは自分が必要としていたカメラの姿をそのまま体現していました。スマホ・一眼・シネマカメラ。三者三様に良いところがある。欠点もある。それらを一旦バラして繋げたらどうなるか。

軽くどこへでも持ち運んで、いつでも最高のクオリティーを、将来に渡って拡張していける器を持って。

冒頭にも話した、自分をどのジャンルに置いてよいか分からなくなるほどに独立・先鋭化していった昨今のカメラ達には正直悩まされていました。一眼で写真家のような美しい一枚を撮ってみたいけど、スマホの高性能化と圧倒的な手軽さで気持ちは鈍り、増して最終的な憧れにいる実写映画界はこちら側にはまったく分からない深淵であって、自分が”実像”を扱わないアニメ業界にいるというのも相まってどうすればいいのやらさっぱりでした。そこへカウンターを喰らったんです。自意識過剰かもしれませんが、まさに自分のためにあるようなカメラだったんです。これぞ青天の霹靂!しかしこういった迷いは、これから「カメラを使って何かをしよう」としている多くの人々にもきっと通ずるはず。fpは今の漠然と広がるカメラの海を遭難しないよう渡してくれる船頭のような存在に思えます。

 

ここまで来ると、アニメ屋なので写真はそこそこでいいです、とはなんとも失礼なという気持ちになります…想像力をここまで広く受け止めてくれる見事な道具を作ってくださったからには、最大限に使い切ってみたい。最終的にはこの道具の存在を忘れるほどに使い倒してみたい。それはSIGMAが「カメラ本位でもメーカー本位でもない使い手本位のカメラ」をコンセプトにしているというのも納得の、自分もそうしたいと体感的に思わせてくれる器を持った道具。

これからのアップデートと拡張性含め、可能性には胸が膨らむばかりです。

 

と、そんなことを言っておきながら…ガジェットオタク気味な自分は早速SIGMAのレンズやら何やらを買ってみたりで、純粋にSIGMAの沼にハマっている?好きになった企業はちゃんとお付き合いしたいのも性根でして…。

ハマりつつも、本業のアニメーションは頑張り絵を描こうとする想像力も絶やさないように、またそれが枯渇しないようにSIGMA fpも使って刺激され…を繰り返してみます!

 

 

 

ps.


SIGMAの思想を物語るこの映像も素敵です。何気に音楽家の方がコロリドでもお世話になった方で縁を感じます。

 

CDケースの裏で

クモがフカフカの糸の中でお休みしていた。

しかも卵を抱えて。

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むにっと触って起こしてしまい申し訳無い...

これからの季節、家の中の害虫さんをたんまり食べとくれ

 

最近あった仕事上の変化は、また整理がついたところにて、ここに書くことに...

『ペンギン・ハイウェイ』について

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映画を作っています。

この映画にはペンギンという “鳥” がたくさん出てきます。

でもご存知の通りこの鳥達は、飛びもしないでヨチヨチ歩いてばかり。鳥なのに。

元を辿れば同じ鳥、有名な始祖鳥にも行き着くでしょうし、もっと戻ると恐竜。

恐竜なんて聞くとあの力強いイメージと、このヨチヨチずんぐりむっくりな

イメージが違いすぎてなんだかヘンテコで可笑しい気持ちにもなりますが、

それが結びついてしまうのが、生命進化の大変面白いところ。

本当に、面白いところ。

 

…いきなり話が道草食う方向になっていますが

自分にとってはご縁を感じていることなんです。

以前作った大変思い入れのある短編映画「陽なたのアオシグレ」。

これに物語の重要なモチーフとして鳥を描きました。

それもまあたっぷりに、空を縦横無尽に駆けるように。

 

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だから今回は、ヨチヨチの飛ぶことをやめてしまった子達だけど

選んだ道は違っても同じ血の通う、同じ鳥で

もう一方は空を、もう一方は海を “飛ぶ”

同じ仲間なんだね、っと

一人はぐれていた君は、きっと色んな苦労をしてきたんだね、っと

君もこっちにきていいんだよ、と

なんだか声をかけたくなるような妙に温かい気持ちでいます。

その場所も時間も個人的事情も越えた、ヘンテコなつながりを想像すると

なぜだか勇気と、ロマンをもらえるような気がします。

 

そんなロマンをくださった方々。

まず何を置いても原作者の森見登美彦氏の温かな眼差し、

脚本の上田誠氏からは長年の森見氏付き合いからなる森見氏愛をくださり、

キャラデの新井陽次郎氏の画に秘められたキャラ愛、

音楽の阿部海太郎氏の、温かく勇気づけられる音楽愛、

主演キャストの北香那さんと蒼井優さんの名演、

そして関係各所の方々に、感謝、します。

 

 

…という映画制作が無事終わったかのようなことを喋りつつ

実はまだ全然終わっていないので、明日からまた頑張ります。

ペンギンのために!

 

 

 

 

 

最後に、話しついでに鳥にまつわるオススメの本を

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そして恐竜は鳥になった: 最新研究で迫る進化の謎

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